時代遅れの成果主義型ver.2.0は創造性を破壊する。21世紀版『人を動かす』モチベーション3.0はワクワクする自発的な動機づけ。
1945年に、カール・ドゥンカーという心理学者がこの実験を考案し、様々な行動科学の実験で用いた「ロウソクの問題」と呼ばれるものがあります。
私が実験者だとします。私はあなた方を部屋に入れて、ロウソクと、画鋲と、マッチを渡します。そしてこう言います。「テーブルに蝋がたれないようにロウソクを壁に取り付けてください」。あなたならどうしますか?
多くの人は画鋲でロウソクを壁に留めようとします。でも、うまくいきません。あそこで手真似をしている人がいましたが、マッチの火でロウソクを溶かして壁にくっつけるというアイデアを思いつく人もいます。いいアイデアですが、うまくいきません。5分か10分すると、たいていの人は解決法を見つけます。このようにすればいいのです。(解答のスライド) 鍵になるのは「機能的固着」を乗り越えるということです。最初あの箱を見て、単なる画鋲の入れ物だと思います。しかしそれは別な使い方をすることもでき、ロウソクの台になるのです。これがロウソクの問題です。
次にサム・グラックスバーグという科学者がこのロウソクの問題を使って行った実験をご紹介します。彼は現在プリンストン大学にいます。この実験でインセンティブの力がわかります。彼は参加者を集めてこう言いました。「この問題をどれくらい早く解けるか時計で計ります」。そして1つのグループには、この種の問題を解くのに一般にどれくらい時間がかかるのか、平均時間を知りたいのだと言います。
もう1つのグループには報酬を提示します。「上位25パーセントの人には 5ドルお渡しします。1番になった人は 20ドルです」。これは何年も前の話なので、物価上昇を考慮に入れれば、数分の作業でもらえる金額としては悪くありません。十分なモチベーションになります。
このグループはどれくらい早く問題を解けたのでしょう? 答えは、平均で3分半余計に時間がかかりました。3分半長くかかったのです。そんなのおかしいですよね? 私はアメリカ人です。自由市場を信じています。そんな風になるわけがありません。(笑) 人々により良く働いてもらおうと思ったら報酬を出せばいい。ボーナスに コミッション、あるいは何であれインセンティブを与えるのです。ビジネスの世界ではそうやっています。しかしここでは結果が違いました。思考が鋭くなり、クリエイティビティが加速されるようにとインセンティブを用意したのに、結果は反対になりました。思考は鈍く、クリエイティビティは阻害されたのです。
この実験が興味深いのは、それが例外ではないということです。この結果は何度も何度も、40年に渡って再現されてきたのです。この成功報酬的な動機付け―If Then式に「これをしたら これが貰える」というやり方は、状況によっては機能します。
If Then式の報酬は、このような作業にはとても効果があります。単純なルールと明確な答えがある場合です。報酬というのは視野を狭め、心を集中させるものです。報酬が機能する場合が多いのはそのためです。だからこのような狭い視野で目の前にあるゴールをまっすぐ見ていればよい場合には、うまく機能するのです。しかし本当のロウソクの問題では、そのような見方をしているわけにはいきません。答えが目の前に転がってはいないからです。周りを見回す必要があります。報酬は視野を狭め、私たちの可能性を限定してしまうのです。
これがどうしてそんなに重要なことなのでしょうか? 西ヨーロッパ、アジアの多く、北アメリカ、オーストラリアなどでは、ホワイトカラーの仕事には、このような(サルでも分かる)種類の仕事は少なく、このような(本当のロウソクの問題のような)種類の仕事が増えています。ルーチン的、ルール適用型、左脳的な仕事、ある種の会計、ある種の財務分析、ある種のプログラミングは、簡単にアウトソースできます。簡単に自動化できます。ソフトウェアのほうが早くできます。世界中に低価格のサービス提供者がいます。だから重要になるのは、もっと右脳的でクリエイティブな考える能力です。
1990年代半ば、Microsoftは Encartaという百科事典を作り始めました。適切なインセンティブを設定しました。何千という専門家にお金を払って記事を書いてもらいました。たっぷり報酬をもらっているマネージャが全体を監督し、予算と納期の中で出来上がるようにしました。何年か後に、別な百科事典が開始されました。別なモデルを採っていました。楽しみでやる、1セント、1ユーロ、1円たりとも支払われません。みんな好きだからやるのです。
ほんの10年前に、経済学者のところへ行ってこう聞いたとします。「ねえ、百科事典を作る2つのモデルを考えたんだけど、対決したらどっちが勝つと思います?」 10年前、この地球上のまともな経済学者で、Wikipediaのモデルが勝つという人は 1人もいなかったでしょう。
これは2つのアプローチの大きな対決なのです。モチベーションにおけるアリ vs フレージャー戦です。伝説のマニラ決戦です。内的な動機付け vs 外的な動機付け。自主性・成長・目的 vs アメとムチ。そしてどちらが勝つのでしょう? 内的な動機付け、自主性・成長・目的がノックアウト勝利します。
科学が解明したこととビジネスで行われていることの間には食い違いがあります。科学が解明したのは、(1) 20世紀的な報酬、ビジネスで当然のものだとみんなが思っている動機付けは、機能はするが驚くほど狭い範囲の状況にしか合いません。 (2) If Then式の報酬は、時にクリエイティビティを損なってしまいます。 (3) 高いパフォーマンスの秘訣は報酬と罰ではなく、見えない内的な意欲にあります。自分自身のためにやるという意欲、それが重要なことだからやるという意欲。
大事なのは、私たちがこのことを知っているということです。科学はそれを確認しただけです。科学知識とビジネスの慣行の間のこのミスマッチを正せば、21世紀的な動機付けの考え方を採用すれば、怠惰で危険でイデオロギー的なアメとムチを脱却すれば、私たちは会社を強くし、多くのロウソクの問題を解き、そしておそらくは世界を変えることができるのです。これにて立証を終わります。
引用:やる気に関する驚きの科学 (TED Talks)
大事なのは、私たちがこのことを知っているということです。科学はそれを確認しただけです。科学知識とビジネスの慣行の間のこのミスマッチを正せば、21世紀的な動機付けの考え方を採用すれば、怠惰で危険でイデオロギー的なアメとムチを脱却すれば、私たちは会社を強くし、多くのロウソクの問題を解き、そしておそらくは世界を変えることができるのです。これにて立証を終わります。
引用:やる気に関する驚きの科学 (TED Talks)
完全結果志向の職場環境(英: Results-Only Work Environment、ROWE)
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